林檎と窓と黒苺

新しいものを見つけたら。

あなたのPX7 S2のヘッドバンドはだいじょうぶ?(長編)

Bowers & Wilkinsのヘッドフォンは良い。

 

しかしだが、形あるものはいつか崩れる。 

 

PX7も例外ではない。 これは、ヘッドバンドの革がボロボロになってしまったPX7を復活させる記事である。

 

もうPX7の音を聴いてしまったので他のヘッドフォンじゃ満足できない。 こんなことになっちゃったしもう一台買うか。

 

あるいは、

 

どうにかできないものか。高かったんだよこれ。

 

という向きに贈る。 

最初に免責である。

 

この記事はリアルタイムで修理した内容を写真に収め投稿するものである。 
プラスチックや生地、革、ネジなどの力の入れ加減がイマイチわからず破壊したことがあるという向き


カッターやハサミの操作が危うく指を切り落としそうになったことがある向き
は、この記事の内容は読むだけにしていただくのが良いだろう。 
 このためこの記事を信用して作業した結果うまくいかなかったり怪我をしてしまっても一切それらの責任を担保しない。実施する場合は自己責任でお願いする。

 

次に謝辞である。

 

この一連の作業はこの記事の追試である。元記事はPX8向けだがPX7の構造は同じである。

氏にこんな辺境の記事からではあるが謝意を伝えたい。

 

This article is based on a post written by Plus-Path-527-san on Reddit. I would like to express my gratitude.

Thank you, Plus-Path-527-san!!

 

では参りましょう。 この記事にはアフィリエイトリンクはありません。

 

1.分解編

僕のPX7はこんなことになりました。

 

加水分解ですきっと。

すでに開いてしまっているが、この記事を書くつもりがなかったのでサクサク交換しちゃおうと思っていた。

 

ここまで進行したとき、もし僕のPX7の他にも救えるPX7が1台でも多くなれば良いよね、と思い写真を撮り始めている。

 

ここで、僕が使った道具を紹介する。

道具たち

左から、プラスチック製のこじり棒(以下コジコジと書く)、1.2mm精密ドライバ(+)(以下ドライバと書く)、先端ピックのドライバ(以下ピックと書く)、それと0.1mmのステンレスシート(以下ペラと書く)、ペットボトルキャップ(以下キャップと書く)だ。

 

このうちマストで必要なのは1.2mmドライバ(+)とこじり棒か先端ピックのドライバだ。

 

一応ここから先の作業ではこれらが登場するが適宜代用品を見つけてほしい。

 

またカッター、はさみ、定規、3mm幅両面テープ、ペンなども必要になる。

 

上の少し開いているPX7の話だ。

ヘッドバンド上部(お空のほう)と下部(髪に接触するほう)の間にスキマがある。まずここを見つける。

ペラがあればスキマに差し込む。

スキマについて写真を確認いただきたい。

ケーブルがあるので丁寧に差し込むと写真の左側、ヘッドバンド上部に突起が見えるだろう。このあたりにペラが他より深く入る位置がある。そこをみつけたらヘッドバンドを傷つけないようにヘッドバンド上部とペラの間にピックを水平に入れる。すっと入れられたら反対側まで入れる。 ヘッドバンドの構造的に金属プレートがあるので断線させることはないと思うが、適度に力を入れる。

 

もうこれ以上行かないよね、という状態になったら、ピックの先を支点にしてヘッドバンド上部をテコの原理で持ち上げる。このとき支点にするのはピックの胴部分ではない。作用点がピックの胴であることに注意する。ピックの先を作用点にするとヘッドバンド上部を傷つけるおそれがある。

 

適度に力を入れるとクリップが外れる感触がする。おそらく

赤丸と青丸

青丸部分が外れたはずだ。このときのヘッドバンド上部と下部にできるスキマはほんの少しだ。そのままピックをコジコジに変更してさらにこじると写真の赤丸部分が外れる。爪で止まっているので馬鹿力を出さなければパキンと外れるはずだ。

 

これを繰り返す。

ペラはいらない。最初だけ。

半分ぐらいまで行けばあとは手でパキパキと外せるので慎重に行う。

 

馬鹿力禁止です。

これでヘッドバンド上部と下部の分離ができた。 もしかすると写真に見えているステンレス板がばいーんと外れるかもしれないので注意してほしい。 結局外すことになるのでばいーんにだけ注意。

 

ヘッドバンド上部の爪を見てみる。

ヘッドバンド上部の爪確認

最後のところはスライドしてはめなければならなそうだ。覚えておこう。

 

ヘッドバンド下部のぼろぼろになった革を外す。 革は両面テープで留まっているので丁寧にはずそう。 捨てるだけだけどね。ヘッドバンド両端の革が部品に噛んではずれないかもしれない。この記事内で「ジャンプ1」と検索してそこにある写真以下を参照してここに戻ってきてほしい。

 

これだけの両面テープで留まっていた。 革側にも付いているので、ま、安普請と言えるかもしれない。

 

できればボンドで留まっていてほしかった。

両面テープ

それで、外したほうの革がこれだ。 Redditでは、FakeLeatherだ、とPlus-Path-527さんは書いたのだが、ポスターにナッパレザーって書いてあるよ、という人が出てきた。 そうしたら、

Plus-Path-527さんが「誤った情報を書き込んでごめんね」と謝っている。 なんていい人なんだ。

 

取れた革(自称ナッパレザーとブツ)がこれ。

なっぱれざー

 

なっぱれざーの繊維

 

僕はレザークラフトを趣味としていて比較的革には明るいと自負していたのだが、ナッパレザーって合成皮革の裏地のように編まれた生地なんだ・・・知らなかった・・・

ま、確実に合成皮革です。 広告にナッパレザーって書いてあったのにフェイクレザーなわけないでしょ、と書き込んだ人は猛省していただきたい。 まずご自分で分解してそれがナッパレザーなのか合皮なのか確認してほしいもんだ。 

最近主に仕事でこういうやったこともないのに知ったつもりになっている奴らが湧いてくるので過敏に書いてしまった。

 

そんなわけでPX7は加水分解の果てに崩壊してしまうのですね。 イヤーパッドも同様なのでこれも崩壊したらリペアしよう。(過去記事で純正品と交換してしまったのだが)

 

さ、ここまででヘッドバンド上部と下部、ステンレスに分離されたのでこのあとの工程で重要になる箇所を確認する。

 

まず1つ目。 ぼろぼろのフェイクレザーがこれに噛んでいたらネジをドライバで外してきれに剥がす必要がある。 (ジャンプ1)

左右にある

2つ目。

センターマーク

まず、ネジを外すほうから。

 

このネジを外すタイミングは2つある。 一つはフェイクレザーを外すとき、この部品に噛んでうまく取れないかもしれない。 2つ目は新レザーを装着するとき、だ。

外し方は簡単。ドライバを使って4つネジを外す。 写真は一つネジを外した状態である。

こういうネジは紛失すると替えがきかないのでキャップに入れることをおすすめする。

4つのネジを外す。

外すとこういう構造になっている。

 

ストッパーが見える

4つのネジを外したらユニットをキチンと把持したほうが良い。このビロンビロンとしたケーブルは飾りではない。

 

これを外すと巻き込まれている革が取れる。 ボロボロになっていたら外さなくてもするっと抜けてくると思うが。 革が外せたらイヤーユニットが脱落しやすいと思うので軽くネジ止めして固定しておくと良い。

 

2つ目センターマークのほうは、このケーブルについた銀のマークもそれを中央に収めたところにある爪もこのあとの作業で重要となる。 覚えておこう。

 

2.ヘッドバンド革の製作編

 

大変申し訳ないが、手書きの型紙である。 A4でプリントアウトして参考にされたい。

サイズはセンチメートルだ。サイズ凡例を書いているので定規を当ててこのサイズより大きく印刷されていればま、良いでしょう。 小さく印刷されていれば凡例同サイズ程度まで大きく型紙を切ってほしい。 あまり大きくすると困ることになるかもしれない。

A4でどうぞ

で、革を選ぶ。 革は洋裁やさんで売っていると思うので合皮でも本革でも良いので入手してほしい。 ただ合皮だと加水分解の可能性があるので注意が必要だ。 

選ぶ革はとにかく薄いものを選んでほしい。 柔らかさより薄さが重要である。

僕は豚革0.3mmをチョイスした。ピッグスキンは薄さの割に丈夫だ。 少し光沢があるが、別の作製物の端切れがあったのでそれを流用することにした。

ピッグスキン

ピッグスキンは裏側(床面)がグロい。 この記事を手がかりに修理にチャレンジする向きはピッグスキンの裏を見てグロければOKだ。 そうじゃないと合皮の疑いがでてくるので「本革ですよね?」とお店に確認しておこう。 でなければ毛穴が3点見えたらそれは間違いなくピッグスキンです。

 

ぐろいっしょ?

僕はこれでおそらくはヘッドフォンのドライバユニットが壊れるまでヘッドバンドは持つだろうという読みでこの革にしている。

 

写真には線通りではなく裁断された型紙が写っているが、粗裁ちからカットするためこうしている。一発で切れるひとは型紙の線どおりにカットして革の裁断に臨んでほしい。

 

で粗裁ちからのカットを説明する。

 

両面テープ

粗裁ちした型紙に両面テープを貼る。 両面テープの貼り方についてここで練習しておくといいかもしれない。

粗裁ちしたのにキワにテープ貼ってない?と気付いた人は正解です。浮くとカットしたときにずれるかもしれないのでキワにぐるりと一周貼って、中央付近に2本両面テープを貼っている。 両面テープの種類によるがピッグスキンの表面(吟面)は少しの時間なら両面テープのノリが剥離しやすい。 起毛は剥がれにくいことが多いのでスエードに変更したい向きは注意が必要だ。

 

で、これを革に貼って裁断する。今度は本裁になるので注意してハサミあるいはカッターを使ってほしい。

 

基本的に直線と両端はRが付いているので定規をあてて切ると良い。 革包丁をもっているのならそれでカットすると確実だ。カッターだと使い慣れていないとたぶん両面テープにかかったところで切れが悪くなるかもしれない。

 

Rの切り方例

これは老婆心なのだが、Rのカット、あまりクラフトに馴染みのないひとは線に沿って切ろうとするのではないだろうか。 
PX7をここまで実際にリペアしようとするクラフト好きな人は僕と友達になれそうだ。
Rの曲線に沿って切るのではなくRを小刻みに直線の組み合わせにして切るときれいに切ることができる。このRだと最小8回の直線で裁断できると思う。もっと細かく刻むとよる美しいRに切ることができるのだがじつはここは隠れてしまうところなので雑にならない程度に裁断を楽しんでほしい。

 

裁断が終わったら型紙をまだ剥がさずにつぎのフィッティングに入る。

 

裁断を十分に楽しんだら、いよいよ取り付けに入る。

ヘッドバンド上部のセンター位置を確認する。

裁断した革と粗くフィッティングしてみる。

型紙のセンターは写真では裏面にあたるがその線とケーブルの銀マークを合わせてヘッドバンド下部に巻けるかを確認する。 おそらく巻けるはずだが選んだ革の厚さによって「あれ?曲がんなくね?巻けなくね?」事件が起きるかもしれない。端まで革はあるのに巻ける気がしないのは革が厚いためなので巻けそうになかったら別の革を調達したほうがいい。サイズを変えると(大きくすると)もっと巻けなくなる。 薄さが重要になることを再度思い出してほしい。

 

よっしゃ巻けるぜー、となったら型紙をベリベリと剥がして革裏面に両面テープをキワに貼る。

3mmの両面テープを使うと良く、これは貼り込む位置をおおよそ正確に測るためだ。両面テープはセンターから左右にRがつく手前までとRの部分に分けると良い。

左辺センターで切って2本右辺センターで切って2本R部2個所という意味だ。

両面テープ

このときのコツとしては両面テープを貼ったあと、これを圧着すると良い。ローラーがあると良いがローラーがない場合は滑らかな曲線を持った道具、例えばピックの握りの尻部分などで軽くこする。強く擦ると剥離紙が剥がれてしまうので圧着を目的として押さえてほしい。

どこのご家庭にもある圧着ローラー

ここまで準備ができたら巻きの工程に入る。

 

3.巻く編

 

巻きはおそらくユニットを取り外したほうがやりやすい。

再掲

左右のこの部分を外してしまおう。もしフェイクレザーを取り外したあともとに戻していない向きはそのまま巻いて良い。

 

計8本のネジはキャップに入れて手から離れたところに置こう。

 

イヤーユニットを外す。このときケーブルのねじれがこのあともとに戻すときの手がかりになるのでケーブルを伸ばさずにそっと両方のユニットを保管しておく。

 

さてヘッドバンド下部だけになったところで巻く。

 

端っこ合わせ

端を合わせる。 写真にあるようにえぐれているので革を寄せ気味にして巻く。

寄せ気味ってこういう意味です。

端の両面テープを剥離してギリギリで巻く。圧着しないとズレるあるいは剥がれて位置決めが怪しいことになるので忘れずに。

 

スポンジを潰して巻いていく。剥離紙は写真にあるように必要な分剥離して貼り付け、圧着、剥離を繰り返す。 そうしないと両面テープがスポンジに貼り付いてイラッとすることになる。

反対側の端に向かって引っ張りながら巻く。力の加減を忘れないように引っ張りながらスポンジを潰して巻くのがコツだ。

写真が飛んでしまっていたのでこの写真に違和感を覚えた人は正解です。

なお、キャプションにある違和感というのは、ネジ全部外したはずなのに写真にはもう取り付けしていることだ。 

 

実は、巻きに苦労して結局、スポンジは当然潰し、引っ張りながら巻くそれもかなり引っ張ったほうがいい、ということがわかり取り付けたあとの写真なのだ。

 

そんなわけで巻き終えたら、端の部分で革が少し足りなくなった向きがいるかもしれない。これは引っ張りかスポンジ潰しが甘いか、革が厚いかが原因だ。

 

フィッティングのとき、「巻けないかも」を強行するとここで足りなくなるかもしれない。サイズを長くしても巻けない理由はここまで実践したならもう分かるだろう。

端の処理(巻き)が物理的に難しいのだ。 革が厚いと。 長いサイズにするともっと物理的に無理が来る。

 

で、無事に巻けたらイヤーユニットとケーブルを格納する。

 

巻けた

まずケーブルのセンターを決める。

 

センター

ここにケーブルを収めたら、基本的に水平に波打っているので波がねじれないようにイヤーユニットを固定する。イヤーユニットは倒れる方向が不自然なら捻れているので同じ方向に倒れるようにする。 

 

次はスチールプレートをはめる。 写真の順番には意味がある。

まず、センターをはめる。 この爪にかかっているがわかるだろうか。

プレートをぐっと押し込むと爪にかかるのだが、その位置決めで次の写真を参考にしてもらいたい。

スチールプレートはめる1

スチールプレートはめる2


左右にスチールプレートのガイドが付いていて、これにかかるようにプレートの端を挿入する。 

スチールプレートがないPX7はグラグラなのでこのガイドにうまくはめつつセンターの爪で固定するのだ。

 

ここが最後の難関だが数回もトライすればハマるとおもう。

 

そしてヘッドバンド上部を下部につける。

最初に見たようにヘッドバンド上部の端はスライドしてはめるようになっているので、片側の端をはめたら爪が左右にあるので右左と順番に爪を固定してセンター付近でもう片方の端を差し入れ、右左右左と爪を入れていくと完成だ。

 

完成

 

豚革がマッチしていて最初のボロボロから見違える。 おそらくはドライバユニットの寿命でも革はボロボロになっていないだろうな。

 

ただし、両面テープが適切だと思ってこれでリペアしたが、問題なさそうであればRedditの元記事通り接着剤で固定してしまったほうがいいかもしれない。様子をみていずれやろう。

 

それでは長文の記事にお付き合いいただきありがとうございました。

新生リペア済PX7とまた音楽をたのしみましょう。

 

(20251010)